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『いけにえと雪のセツナ』、「スクウェア・エニックス」の古典的名作の多くをリスペクト

「あの頃、みんなRPGに夢中だった。とりもどそう。ボクたちのRPG―。」

1990年代から2000年代初頭まで数多く存在し、今や衰退して久しい日本製RPG達。『いけにえと雪のセツナ』は、あえて今の時代だからこそ、それらの古典的なRPG達をリスペクトした一作となっています。

販売は「スクウェア・エニックス」ですが、開発元は「Tokyo RPG Factory」です。「スクウェア・エニックス・ホールディングス」の100%出資の子会社であり、『いけにえと雪のセツナ』は、「Tokyo RPG Factory」の処女作でもあります。

http://www.tokyorpgfactory.com/

「スクウェア・エニックス」の古典的名作の多くをリスペクト

『いけにえと雪のセツナ』は、古典的なRPGの中でも『クロノ・トリガー』を強くリスペクトしています。開発者が自ら、それをアピールするほどです。戦闘システムは、『クロノ・トリガー』のATB(アクティブ・タイム・バトル)をベースに独自の要素を付加したものとなっていて、技の連携や、3人技も存在します。

技自体も、「エックス斬り」から「カエル落とし」まで、『クロノ・トリガー』に存在した懐かしい技がずらり。その他、『ファイナルファンタジーVII』のマテリアをリスペクトした「法石」や、「地滑り残月」など、『クロノ・トリガー』だけにとどまらず、かつての「スクウェア・エニックス」の古典的名作の多くをリスペクトしているといっても過言ではありません。

「いけにえ」「雪」「セツナ」がテーマ

タイトル通り、「いけにえ」「雪」「セツナ」がテーマとなっています。世界は、全編雪景色であり、草原も砂漠も山々もありません。本当に雪景色しかありません。大きな大陸と島々から成り立っており、ヒロインの「セツナ」が、「いけにえ」として「最果ての地」を目指します。世界は、魔物がはびこっており、魔物を抑えるには、「最果ての地」で、魔力の高い「いけにえ」を捧げる必要があるのです。その「いけにえ」に「セツナ」が選ばれました。主人公(エンド)は、セツナの護衛として、旅路をともにします。自己犠牲型のストーリーと言えるでしょう。

セツナは、強い使命感を持つ気丈な少女となっています。「いけにえ」として捧げられるのにもかかわらず、あまり悲壮感を見せません。名前は「短く一瞬で消え去ってしまう時間」を意味する「刹那」から名付けられたものでしょう。なお、ヒロインの名前だけでなく、「刹那システム」と呼ばれる戦闘システムや、「刹那」と名付けられた武器も存在します。

「刹那」が一瞬の時(とき)を意味するように、「時」も重要なテーマとなっています。セツナ以外にも、主人公のエンド(終焉)、クォン(久遠)、ヨミ(黄泉)など、時を感じさえる名前は他にもあります。

なお、主人公のエンドは、プレイヤーの分身であり、基本的に喋りません。『ドラゴンクエスト』や『クロノ・トリガー』の主人公と同様ですね。選択肢はポツポツとでるものの、選択肢の内容によってメインストーリーが分岐するようなことはありません。

淡白であり、起伏に乏しいメインストーリー

シナリオは基本的にシリアスです。自己犠牲が強く出ているので、苦手な人もいるでしょう。全体的に淡白であり、薄味です。テキストのボリュームも少なく感じます。メインストーリーも非常にあっさりしているうえ、これといった驚きも無いよくある凡庸なお話としてまとまっています。あまり多くを語らない1990年代の古典的なRPGと同様です。ある程度、プレイヤーがストーリーを補完していかないといけません。豊富なテキスト量でストーリーを表現してくる今風のJRPGを期待する作品ではありません。

とはいえ、1990年代の古典的なRPG達は、テキスト量自体は少ないものの、ストーリー展開や演出、音楽で盛り上げていました。『クロノ・トリガー』も同様でしょう。それらと比べてしまうと、イマイチ物足りないのも事実です。ラストは賛否両論ですかね。

見下ろし型のグラフィック構成

見下ろし型のグラフィック構成で、昨今のハイエンドゲームのような3人称視点ではありません。ドット絵全盛期の1990年代のRPGは、そのほとんどが見下ろし型(トップビュー)でしたが、ハードウェアのスペックが向上した現在、数少ない日本製のRPGは3人称視点が主流となりました。ドット絵でなく、あくまで3Dですが、見下ろし型のグラフィック構成は、どこか懐かしさを感じてしまいます。

音楽はピアノオンリー

びっくりなことに音楽はピアノオンリーとなっています。ガチでピアノしかありません。曲自体は非常に良いものです。雪景色と非常にマッチしている高品質の出来です。ただ、やはりピアノだけだと抑揚に乏しく、まるで子守唄のようにプレイヤーの眠気を誘ってくるかもしれません。

『クロノ・トリガー』をベースとしたATB(アクティブ・タイム・バトル)

戦闘システムは、前述の通り、『クロノ・トリガー』をベースとしたATB(アクティブ・タイム・バトル)となっています。独自の要素として、「刹那システム」があります。「刹那システム」は、専用のゲージを消費することで、技の効果を拡張するシステムです。技に追加ダメージを付けたり、回復効果を持たせたりできます。拡張される効果は、技ごとに決まっています。

専用のゲージは、ダメージを受けたり、何らかの行動をしたりで少しづつ溜まっていきますが、もっとも溜めやすいのは、行動可能な状態で待機することです。このため、単なるATB(アクティブ・タイム・バトル)で収まらず、行動可能になっても、あえて刹那発動のために待機するという戦略が生まれます。刹那が有用であるため、なおさらですね。

刹那は面白い要素ですが、それでも戦闘はやや退屈に感じてしまう場合があります。雑魚敵は連携技で一掃できてしまうため、作業感が抜け出せません。ダンジョンの攻略が詰まらないのも要因です。ダンジョンは単調且つ一本道で、ギミックも乏しいものです。雑魚敵の配置にも工夫が見られず、同一ダンジョンに出てくる雑魚敵のバリエーションも少ないのです。同一種の雑魚敵を繰り返し、倒していくのみの作業となってしまうのです。

一方でボス戦闘はスリリングです。『クロノ・トリガー』と比較して難易度は高く、特にボスが強いのです。雑魚と違って、きっちり戦略を練らないとやられてしまいます。中盤の羊や、ラッシュを仕掛けてくる虎さんは難敵です。

『ファイナルファンタジーVII』のマテリアのようなカスタマイズ要素

法石は、『ファイナルファンタジーVII』のマテリアのようなカスタマイズ要素です。法器と呼ばれる装備品に法石を当てはめることで、キャラクターの技を追加したり、能力を高めたりします。特殊な効果を付与することもできます。重要な要素であり、ゲームを進める上で、理解が必須です。

敵が強くて勝てない場合は、レベルをあげるより、法石を見直したほうが良い場合も多々あります。法石は、素材を売却することで入手でき、素材は敵がドロップします。レアな素材も存在します。そのため、法石を入手するための素材収集は、このゲームのやり込み要素ともなっています。難点は、法石の付けはずしが面倒なことですね。法器を切り替えても、可能な限り、法石も装着した状態にして欲しかったです。

カスタマイズ要素は法石だけではありません。一応、法石以外のカスタマイズ要素もあります。一応と書いたのは、はっきりって空気気味だからです。具体的には、「料理」「昇華」「武器の強化」などのカスタマイズ要素です。しかし、これといって必要な場面に乏しく、どの要素も使い始めて、理解する頃にはゲームが終わってしまいます。決して使えないわけではありません。「昇華」などは、突き詰めればかなり強いシステムです。使えないのでなく、使う機会が乏しいと言ったほうが良いですね。

20時間程度でクリアできるゲーム

発売前から20時間程度でクリアできるゲームと宣伝されていました。そのため、ボリュームが少ないことは事前にわかっていました。ただ、それでも、あっさりなメインストーリーとあいまって、予想以上にボリュームが少なく感じてしまいます。

また、ボリュームが薄く感じてしまう要因の一つにやり込み要素の少なさが挙げられます。例えば、「強くてニューゲーム」がありません。『クロノ・トリガー』のようなゲームを期待して、プレイした方には、肩透かしだったのではないかと思います。また、「法石」「昇華」などはやり込み要素ですが、やり込んだところで戦う相手がいないというジレンマに陥ります。強さを追求しても、それに応えられる敵がいないのです。強力なシークレットボスのような存在を用意して欲しかったですね。

いけにえと雪のセツナ

凡作の域は出ていません。しかし、駄ゲーでもありません。統一された世界観や雪景色は美しいし、奏でる音楽も見事です。戦闘で戦略を練るのも楽しいものです。しかし、同時に欠点も多いのです。また、『クロノ・トリガー』時代のRPGを知っているか否かで、このゲームの見方も変わります。グラフィックなどは懐かしさを感じる一方で、今風のハイエンドゲームでは決して無いため、当時を知らない人達から見れば「なにこれスマホゲーじゃん」と言われます。

開発元の「Tokyo RPG Factory」は、今回が処女作なので、次回作も是非頑張って欲しいですね。加点方式か減点方式かで、評価が大きく変わる、そんなゲームでした。